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執筆者の写真エース栗原

第30章エース栗原回想記

更新日:2020年6月12日

2016年日本デュアスロン選手権

レースは水ものですから。なんてったって全員が勝ちたがる。その中でたった一人。誰よりも今日、強ければ勝つでしょう。(茄子アンダルシアの夏より)


ゼッケンNo.1 栗原 正明


学生時代の僕は速かった。だからこそ勝っていた。

あれから僕は強くなった。だからこそ勝ちたい。

勝って、あの景色を今度はみんなで見たい。


スタートラインに立って周りを見渡すと両親、僕を救ってくれた自転車屋さん、この競技で出来た素晴らしい仲間たちがいた。


選手は皆、それぞれの想いやストーリーを抱きながらここに立っている。

そしてここから新しいストーリーを書き足していく。


決まったレースなどない。

そのシナリオはライバルや気象条件、そして自分で描いていく。

○1stRun5km(1,25km×4周)


この日は強い風の吹き荒れており、最初から先頭を走るのはリスク。しかし、先頭を取れば自分の展開にペースメイクができる。すでにシナリオを大きく左右する瞬間。僕は自然と先頭を取った。序盤は狭いルートを通るために早くも縦長になる。


500mを過ぎたところで田中選手(ベルマーレ)が先頭に立ち、これにランナー出身の日体大1年安松選手・末岡選手が続く。2周目も縦長のまま集団の切れ目はまだなく、向かい風の区間に入りそれまで集団を牽引してきた田中選手が先頭交代を要求しますが、安松選手は応じずに集団のペースが若干落ちる。 3周目になると先頭集団7名(田中・安松・末岡・栗原・三須・中村・堀内)、10秒ほど遅れて第2集団を外山・肥後・山本選手あたりが牽引する形で形成し始め、終盤に先頭に出たのが三須選手(明治大)。元14分台ランナーでまだまだ走りも軽さがある。

ラストラップ4周目。堀内選手が脱落、第2集団とは20秒ほどに差は広がり、そしてラスト200mからトランジッションに向けた熾烈なポジション争いが始まる。集団の右側から先頭に出ようとするも、先頭を譲らずに再度ペースアップしたのは三須選手。


○Bike20km(4km×5周)


「ヘルメットを付け、靴を脱ぎ、バイクを持って乗車ラインへ」という行程を誰よりも速く終える。得意なトランジッションで数秒の差をつけ、先頭でバイクをスタートする。



乗車ラインからまずは700mの緩斜面を進む。トランジッションで飛び出した勢いを緩めることなくここを上り終えるまで踏み続ける。ここで学生最速ランナーとして名高い中村選手(明治大)を離すことに成功。

上り終えて先頭集団は5名。 第2集団との差は40秒。

下りに入りスムーズに先頭交代を行うローションを組み45-50km/hのペースで下っていき、下り切ったところで折り返しをして、低速から加速しながらホームストレートに続く緩斜面を行く。


この上りへの加速で遅れたのが三須選手と安松選手。先頭集団は3名に。


40秒まで離した第2集団は人数が増え、協調体制も整い僕らの集団との差が徐々に縮まる展開になっています。数的不利の中でもなんとか息を合わせて逃げ続けていたものの、4周目の下りで末岡選手が脱落。


田中選手・栗原の2名のみとなった先頭集団には「逃げれるよー!」と声援が送られ、その差20秒でなんとか逃げ切ろうという意志を互いに確認しながら進行していく。


後続を10秒離した状態でバイクを終えようとしたところ、トランジッションへの誘導がされずそしてラストの折り返し後、上りを終えて10秒ほどの差を付けて逃げ切りトランジッション!!


と思いきや、コース誘導がされず、また必死に逃げすぎて周回を把握出来ていなかった僕らが終わりかどうか迷っている内に第2集団に吸収されてしまうというまさかの事態に!!majide


全く展開の分からぬまま合わさった9名がトランジッションに駆け込んでいく

○2ndRun2,5km(1,25km×2周)

トランジッションを終えて先頭で飛び出したのは末岡選手、それに続くのは若手ながらトライアスロンエリートでも活躍する山本選手そして共に先頭集団で頑張った田中、僕の順で続いていきます。

2ndRun2,5kmという短い距離のために末岡選手が序盤からかなりのスピードで早期決着を狙います。500mで僕は肥後選手に抜かれ、末岡-山本-田中-肥後-栗原の順で走行。

向かい風区間に入ると栗原選手が息を吹き返し肥後選手をパス。ただし並び順が変わっただけで先頭5名のまま運命のラストラップ!!!

ここの下り坂を使ってさらにペースを上げたのは末岡選手!

ラスト700mでついに後続選手とギャップが生まれる。 末岡---山本-田中-栗原

ラスト500m 田中選手を抜くも末岡選手とのギャップは埋まらず。 末岡---山本-栗原-田中の順に。 ラスト300m 山本選手を抜いてついに末岡選手との差を埋める。 末岡-栗原-山本-田中の順に。 ラスト250m 追い上げる勢いそのままに末岡選手を抜いてついに先頭!!

しかし末岡選手もすぐに食らいつく。勝負はまだまだわからない。 栗原-末岡-山本-田中 ラスト150m 末岡選手が栗原選手に並びかける。 ゴールスプリント勝負。皆、ペースが上がる。 栗原/末岡-山本-田中 ラスト75m 最後の左カーブを先頭で曲がり、フィニッシュテープが見えた! 栗原-末岡-山本-田中 ラスト50m ブルーカーペット上。 目の前に張ってあるゴールテープに吸い込まれるように走る選手、皆全力だ。

見えていたのはフィニッシュテープではなく、その先にいる仲間たちだった。

ゴールスプリントの勢いのまま、目の前にいた自転車屋さんと抱き合う。その後、父や福島まで応援にきてくれた仲間たちと泣きながら抱き合い。喜びを分かち合った。

もちろん、応援を送ってくれたのは現地いる仲間たちだけではない。

この景色を一緒に観ようと僕を今まで応援してくれた仲間たち、共に戦ったライバルたち、山梨県の仲間たち、そしてここまで僕を諦めさせてくれなかった人たちに感謝を!

6年ぶりの日本チャンピオン。

表彰台から見た景色は前回とはまったく違うものだった。

たくさんの仲間とともに僕は次の目標を設定する。


それはIRONMAN

トライアスロンの原点。


まだまだ見たい、アスリートだからこそ見せることが出来る景色がある。

ストーリーはまだ半ばだ。


次回、IRONMAN70.3への挑戦

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